夏も目前、この季節になると思い出すこと。
イタリアで経験した心に残る出来事といえば、「パーリオ観戦」。
イタリアに引越してから初めての国内旅行にでかけました。行き先はピサ、シエナ、フィレンツェの3都市。中でも一番印象に残っているのはシエナのパーリオ観戦です。
サッカーを愛するイタリア人、パーリオはシエナに住む方々にとって、そのサッカーより情熱を捧げる重要なイベントなんだそう。九州出身、自称お祭り好きの私も体験してきました。
90秒にかける!パーリオとは
パーリオは13世紀から続く、馬の競技。日本でいう、競馬に近い競技です。
世界一美しい広場とも言われるシエナの中心部「カンポ広場」で行われます。年に2回(7月2日と8月16日)シエナの各区域(イタリア語でコントラーダ)を代表する10頭の競走馬がカンポ広場を3周し、順位を競い合います。
競技時間は長くても90秒とあっという間。この一瞬のためにイタリア国内はもちろん、世界中から観光客が訪れ、毎年2万人以上にのぼるのだそう。競技の前日に到着すると、シエナの街中は既にお祭りモード全開。パレードなどで活気にあふれ、応援歌が街中あちこちに響きわたっていました。この競技では、コントラーダ(チームのようなもの)ごとに縄張りがあって、独特の緊張感も漂っていましたよ。
騎士の壮行会ディナーへ
幸運なことに、夜は競技前夜に行われるコントラーダの壮行会へ参加させて頂きました。
会場は屋外、シエナの美しい石造りの路地に長いテーブルが並べられて、ハリーポッターのようなまるで映画の一コマのようでした。
食事が始まると一斉に立ち上がり騎士に向けて「乾杯」、次々に運ばれるトスカーナのワインとお料理を楽しみながら、応援歌の合唱が延々と続きます。
応援歌を知るわけもない私たちですが、隣の人と乾杯したり話したり、また応援歌が始まり。と楽しい時間となりました。この頃イタリア語が全く話せなかった私がどうやってコミュニケーションを取っていたのかなと、今考えると不思議ですが。つまり祭りに国境なし。
夕方4時過ぎから始まり、11時を過ぎても終わる気配のない壮行会。大事な日を控えた騎士の方も退出する様子はなくますます盛り上がる中、私たちはお先に退席しました。
実は、こちらのコントラーダはここ8年間優勝していないのだそうで、本番がどうなるのか楽しみです。
いよいよパーリオ当日!特等席の裏側は…?
いよいよ競技当日。観戦させて頂いたのは広場に面するブティック2階のテラス席。
広場の反対側のお店入り口から入り、ショップ内には飲み物が置かれ特別に観戦スペースになっていました。テラスから外を眺めると大勢の人々が広場を埋め尽くし、会場は熱気に溢れます。
パレードが始まりコントラーダや騎士の紹介。13世紀から変わらないんだなぁと感動しながら見入っているといつの間にかパレードが終了。いよいよレースが始まります。
競走馬が並んでからスタートまでの時間、あんなにザワついていた会場が一瞬にしてシンッと静まり返ります。会場はとてつもない緊張感でした。(イタリア人がこんなに集まっていて、これほど静かになっているのにとりあえず驚く。)スタートまでの数分で、騎士同士、敵のコントラーダに負けてくれない?など、賄賂が行われていたりするのだそう。
スタートの銃声が鳴り響くと一斉に競走馬が走り始めます。レース中には鞭の打ち合い、押し倒しなど何でもあり。会場は歓声で湧き、迫力のあるレースはあっという間に終了!
応援していたコントラーダは、なんと2位でのゴールでした。惜しい!
と競走馬が全てゴールしたかと思えば会場へ雪崩のように乱入する人々。
「え!何が起きてるの?」と聞くと、どうやら優勝馬に触ると幸せになれるという言い伝えがあるようで、レース終了後は観客が一斉に柵を超え優勝馬と騎士めがけて群がっていました。
ルールも無視して必死に群がる様子は、テレビの中でしかみたことの無い光景で、新鮮でした。もちろん、怪我人が出たりすることもしばしばだそうで笑い事ではないのですが。
パーリオの前夜から真剣に応援する人々、
レース中罵倒を放つ人、喜ぶ人々、落胆する人々…。
祭りにかける人々の情熱を見ながら、
遠くはなれた故郷福岡で、幼い頃に見た山笠に参加する父の姿を思い出しました。
夏もすぐそこ。
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